歌が上手くなるボイトレ練習方法⑦表現力の鍛え方を解説
聴いている人の心に響く歌声とはどのようなものでしょうか。
楽しい歌は楽しく、悲しい歌は悲しく、優しい歌は優しく、激しい歌は激しく、など、「その歌が表現しようとしているものを効果的に表現すること」がそのひとつですね。
どれだけ歌が上手でも、上手なだけでは歌が単調になってしまいます。
今回は、表現力の鍛え方について、
1.何を表現するか
2.技術的にどうやって表現するか
という、2つの観点に分けて解説していきます。
何を表現するか
何を表現するのか?ですが、具体的には、その歌の曲と歌詞が表しているものを表現します。
歌詞をよく読む
「歌詞をよく読んで、何を表しているのかを読み取る」ことは、表現力を鍛える上でよく言われることです。
・その歌全体として何を表しているか
・一番感情が高ぶっている(感情的な)箇所はどこか、どんな風に高ぶっているか
・逆に、比較的落ち着いている箇所はどこか
・歌詞がある程度ストーリーになっている場合は、どこで気持ちに変化が起きるか
それらをじっくり読み取って、どう歌うか考えてみてください。…なんてことが最初から自力でできる方はほとんどいません。
歌詞を自分一人で読んでも、よく分からないことが多いですよね。わかりやすくストレートな歌詞もあれば、個人によって感じ方が変わるような歌詞、わざと歌詞にあまり意味を持たせないようにしている曲もあります。
最初はある程度有名な曲のカバーから始めると思います。ある程度流行った曲ならば、わかりやすい歌詞であることも多いですし、わからない場合でもインターネット上に歌詞の解釈がいくつかあるので、とりあえずそれを参考にしてしまって良いと思います。
自分なりの解釈を持つことはもちろん大事ですが、他人の意見から学ぶことも練習になりますよ。
曲を考える
表現力の元になるものとして、歌詞ほどは言及されていないように思いますが、メロディーやリズムなど曲を構成しているものも歌詞と同じぐらい大事です。
「曲」とは、メロディーだけではありません。伴奏の部分も無視しないでください。どんなリズムが基本になっているのか、テンポは速いのかゆったりなのか、調はメジャー(長調)なのかマイナー(短調)なのか、なども、曲を構成している大事な要素です。
J-POPの場合、実はかなりの曲は、「音楽が表現を助けてくれる」ようにできています。
歌詞の意味をほとんど分かっていなくても、伴奏をしっかり聴きながら、そのリズムや和音などと調和するように歌えば、半分~90%ぐらい表現できてしまう曲もあります。
…と書いてしまうと、前章で述べたことを否定しているように思われるかもしれませんが、そうではありません。
歌詞が何を言っているのかを先に理解しておくことで、よりはっきりと、歌が表しているものが分かります。また、1番と2番と3番で、メロディーや伴奏は同じなのに、言っている内容が変わるような曲もあります。そういった場合は、その音楽の特徴が全体を支配することを念頭におきつつ、1~3番それぞれで歌い方を変える必要があります。
話を戻します。歌詞の理解を相当必要とする歌であっても、音楽の部分が表現と無関係ということはほぼあり得ません。むしろ、歌詞と音楽の関係をしっかりつかむことが、効果的な表現への近道になります。
長調が表すもの
基本が長調な曲は、J-POPでは圧倒的に多いです。
明るい気持ち、ワクワクする気持ち。あるいは、落ち着いた、あたたかい、優しい気持ち。何かを乗り越えて前に進んでいく気持ち、などなど。
短調が表すもの
「短調」は表現において、少し特別扱いできる要素です。どういうときに、「短調」が使われるのでしょうか?
短調の方は特別なので、少し例をあげてみましょう。
例)
「フライングゲット」(AKB48)
相手の女の子の色っぽさにクラクラする感じ、真夏のギラギラ感、心のはやり、など。この緊張したドキドキ感は、長調では表せないですね。
「YELL」(いきものがかり)
別れの歌。嫌いになったとか、うまくいかなくなったとかではなく、それぞれが別の道を選んだことによる別れ。この曲では、別れる寂しさや悲しさがまだ心の中に残っているから短調になるのだと思います。
ここに挙げた例はほんの一部にすぎませんが、共通して言えることは、短調は「不安定な感情要素」を表すときに使われるように思います。安定し、確信を持った感情は長調で表されることが多いです。
長調でも悲しい歌もある
短調のメロディーや和音は確かに暗い感じがします。しかし、悲しい=短調、というのは違います。
例えば、「花束を君に」(宇多田ヒカル)。
明るいしっとりした曲調ですが、亡くなった人への想いを歌った悲しい歌です。
そこで、なぜ長調なのかを考える必要があります。
衝撃的な悲しみの瞬間(大事な人を亡くした、あるいは亡くしたことを知った瞬間)は、短調で表されるでしょう。この曲が長調なのは、衝撃劇な瞬間からはある程度時間がたっていて、悲しみは癒えてはいないけど、既に心はある程度浄化され、亡くなった相手を温かく見送っているからだと思います。
これが唯一の正解というわけではないですが、このように歌詞と曲の両方から考えることで表現力は磨かれていきます。
技術的にどうやって表現するか
何を表現するかが分かったところで、ここからは技術的にどうやって表現するかを学んでいきます。
「歌詞の中の語り手の気持ちになる」ことはもちろん有用ですが、残念ながら、それだけでは聴き手に伝わる表現はできません。
この章では、表現をするにあたって必要な「テクニック」について解説します。
音程やリズムを正確に
案外、「音程やリズムを正確に」歌うことが、表現力の一部だったりします。
1曲の中で、最初から最後まで機械のように正確である必要はありません。曲の中で、大事な音(サビの一番高い音や、急に転調することで何かを表現しているような場合)は絶対に外さないことです。
音を外さない、というのは、伴奏の和音と調和しているということです。その音を最高に綺麗に、あるいはかっこよく聞かせることは、その曲の「表現」の要と言っても良いでしょう。
ブレスの場所
「どこでブレスをするか」も、言葉やメロディーを聴かせるために大切です。
初心者にとっては、「どこでブレスをするか」というよりは「どこでブレスをしてはいけないか」になるかもしれません。そこで区切ってしまったら、言葉やメロディーが台無しということにならないように、「ブレスをしても大丈夫な場所」をよく考えてみましょう。
緩急
勢いのあるメロディーと、ゆったりしたメロディーとでは、歌い方が変わりますね。
勢いのあるメロディーでは、息を少し速く流しながら言葉を勢いよく言います。ゆったりしたメロディーでは、言葉をゆっくりと言います。
声の音色
楽しい歌、悲しい歌、など分かっても、歌い分けられなかったら意味がありませんね。
明るい声を出すには、頭声を多くして、胸声を少なく使うようにします。反対に、暗い声を出すには、胸声をしっかり使います。ただし、声が完全に胸に落ちてしまわないように気を付けましょう。
楽しい歌ではずっと明るい声、悲しい歌ではずっと暗い声、というほど単純ではないでしょうが、少なくとも声の音色の使い分けができれば表現の幅は広がります。
とりあえず「大げさ」に
人前で歌うことに慣れていない人の場合、自分では色々やっているつもりでも、聴き手には全く伝わらないことがよくあります。
歌うときの表現は、普段目の前にいる人と話すときよりも「かなり大げさに」やってください。歌うときには不要な恥じらいは捨てましょう。
歌で表現するためのボイストレーニング
表現の一部として「表情」や「ジェスチャー」などを推奨する方もいますが、練習のときにはあえて「歌以外のことは何もしない」ことを推奨します。
ジェスチャーをしたり、体を動かしたりしたら、それで表現をした気になってしまいますが、歌では全然表現できていないということになりがちです。歌だけで表現できるように練習しましょう。
自分の歌を録音してみて、意図したとおりに表現できているか、客観的に聴いてみると良いと思います。
ボイストレーニングまとめ
歌の表現力を鍛えるには、歌詞や音楽をよく聴いて「何を表現するか」をよく考えることと、色々な技術をつけて「どうやって表現するか」の手段を得ることの、両方が必要です。
そして、「歌のみで表現」できるように、録音などでチェックしながら練習してみましょう。
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